横浜地方裁判所 昭和47年(わ)346号 判決 1974年8月02日
本店所在地
横浜市西区南幸一丁目一一番二号
商業
株式会社横浜会館
代表者
松本英治こと 許英圭
代表者住所
同市神奈川区沢渡五八番地四
本籍
韓国慶尚南道宜寧郡富林面新反里四七二番地
住居
横浜市神奈川区沢渡五八番地四
会社役員
松本英治こと
許英圭
一九三二年六月七日生
被告会社に対する法人税法違反、被告人許英圭に対する法人税法、所得税法違反各被告事件につき、当裁判所は検察官吉川寿純、同小野沢峯蔵出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社横浜会館を罰金一二〇万円に被告人許英圭を懲役一〇月および罰金七〇〇万円に各処する。
被告人許英圭において、右罰金を完納することができないときは金一〇、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。
被告人許英圭に対し、本裁判確定の日から三年間、右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は全部被告人らの連帯負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人会社は、横浜市西区南幸一丁目一一番二号に本店をおき、パチンコ遊技場経営等を目的とする資本金三〇〇万円の株式会社であり、被告人許英圭は、昭和四四年六月五日まで横浜市西区南幸一丁目一一番二号においてパチンコ遊技場「横浜会館」を、また、東京都品川区東五反田一丁目一六番四号において、同遊技場「城南会館」をそれぞれ経営し、昭和四四年六月六日被告人会社に右「横浜会館」の資産と経営を譲渡し、以来、被告人会社の代表取締役として同会社の業務一切を統括しているものであるが、被告人許英圭は
第一、被告人会社の右業務に関し、法人税を免れようと企て、売上げを除外する等の不正な方法により所得を秘匿し、被告人会社の昭和四四年六月六日から同年一二月三一日までの事業年度において、同会社の実際の所得金額は金一六、一五六、三八八円でこれに対する法人税額は金五、五三二、一〇〇円であるのに、昭和四五年二月二八日横浜市中区野毛町三丁目一一〇番地所在の所轄横浜中税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額は金六、八〇五、一四二円でこれに対する法人税額は金二、二五九、二〇〇円である旨虚偽の確定申告書を提出し、もつて、被告人会社の右事業年度の正規の法人税額金五、五三二、一〇〇円と右申告税額との差額金三、二七二、九〇〇円をほ脱し
第二、自己の所得税を免れようと企て、売上げを除外する等の不正な方法により所得を秘匿し
(一) 被告人許英圭の昭和四三年分の実際の所得金額は金三〇、五五一、三〇四円でこれに対する所得税額は金一五、五三四、五〇〇円であるのに昭和四四年三月一五日前記横浜中税務署において同署長に対し、右年分の被告人許英圭の所得金額(事業所得は右「城南会館」分のみ)は金一、四五九、七二六円でこれに対する所得税額は金一一七、九〇〇円である旨、また、同年分の前記「横浜会館」の事業所得につき被告人の実父許燦の事業所得と合算のうえ、同人名義で、前同日前記横浜中税務署において、同署長に対し、所得金額は金一三、三六九、三七六円(うち右「横浜会館」分金七、九〇五、一四七円)でこれに対する所得税額金五、四二三、〇〇〇円(うち右「横浜会館」分金四、〇四九、二〇〇円)である旨各虚偽の確定申告書をそれぞれ提出し、もつて、被告人許英圭の右年分の正規の所得税額金一五、五三四、五〇〇円と被告人許英圭名義の申告税額金一一七、九〇〇円と右許燦名義で申告した右「横浜会館」分の所得税額金四、〇四九、二〇〇円の合計税額四、一六七、一〇〇円との差額金一一、三六七、四〇〇円をほ脱し、
(二) 被告人許英圭の昭和四四年分の実際の所得金額は金二八、〇二八、一七六円でこれに対する所得税額は金一三、三六四、九〇〇円であるのに昭和四五年三月十六日同市神奈川区栄町一丁目七番地所在神奈川税務署において、同署長に対し、右年分の被告人許英圭の所得金額(事業所得は右「城南会館」分のみ)は金四、六〇八、三八九円でこれに対する所得税額は金五七五、七〇〇円である旨、また同年分の前記「横浜会館」の事業所得につき前記許燦の事業所得と合算のうえ、同人名義で前同日前記横浜中税務署において、同署長に対し、所得金額は金一一、〇五〇、〇九一円(うち「横浜会館」分金三、二〇五、五〇七円)でこれに対する所得税額は金三、六五〇、七〇〇円(うち右「横浜会館」分金一、六三八、六〇〇円)である旨各虚偽の確定申告書をそれぞれ提出し、もつて被告人許英圭の右年分の正規の所得税額金一三、三六四、九〇〇円と被告人許英圭名義の申告税額金五七五、七〇〇円と右許燦名義で申告した右「横浜会館」分の所得税額金一、六三八、六〇〇円の合計税額金二、二一四、三〇〇円との差額金一一、一五〇、六〇〇円をほ脱したものである。
(証拠の標目)
判事冒頭の事実につき
一、被告人許英圭の公判廷における供述
一、同被告人の検察官に対する昭和四七年三月三日付供述調書二通
一、同被告人の大蔵事務官に対する昭和四六年一月二八日付質問てん末書
一、許燦の大蔵事務官に対する同年五月二四日付質問てん末書
一、登記官宮崎健造作成の登記簿謄本
判示第一、第二の全事実につき
一、被告人許英圭の当公判廷における供述
一、同被告人の検察官に対する各供述調書
一、渡辺幸彦、山口勇、矢田部修、許燦の検察官に対する各供述調書
判示第一の事実につき
一、被告人許英圭の大蔵事務官に対する昭和四六年二月一日付、同年四月二一日付、同年一一月一日付、同月一三日付、同年一二月一〇日付各質問てん末書
一、被告人許英圭作成の上申書
一、証人金泰錫の当公判廷における供述
一、許燦(昭和四六年一二月一五日付)、金孝植(同年四月一三日付)、長嶋三郎の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、大蔵事務官作成の記録第一六号犯則その他所得調書(貸借44・12期分)
一、横浜信用金庫大口支店長篠原正作成の証明書三通
一、横浜信用金庫本店営業部長城下栄三郎作成の証明書三通
一、フジタ工業株式会社横浜支店総務部長大西進作成の上申書
一、ヤマギワ電気株式会社横浜店長久保田美治作成の上申書二通
一 株式会社横浜家具会館店長宮川護作成の上申書
一、株式会社クラウン家具代表取締役社長山下善次郎作成の上申書
一、株式会社正鳳開発設計事務所代表取締役斉藤正己作成の松本英治(横浜会館)との取引についてと題する書面
一、矢島弘一作成の松本英治関係との取引内容についてと題する書面
一、横浜トヨペツト株式会社横浜営業所総務課瀬戸君雄作成の松本光州こと許燦等との取引内容についてと題する書面
一、株式会社極東設計事務所総務課谷野佳子作成の上申書
一、松栄商事有限会社松江仁寿作成の証と題する書面
一、押収してある株式会社横浜会館名義の昭和四四年六月六日、同年一二月三一日事業年度分の確定申告書一綴(昭和四八年押第二一六号の六)、土地売買契約書等一袋(同号の一一)、約束手形(民間建設工事標準請負契約約款一通を含む)一袋(同号の一五)総勘定元帳一綴(同号の一七)、日計表一〇綴(同号の一八)
判示第二の一の事実につき
一、被告人許英圭の大蔵事務官に対する昭和四六年二月一日付、同年四月二一日付、同月二八日付、同年八月一三日付、同年九月八日付、同月一六日付、同年一〇月一〇日付、同年一二月一〇日付、同月一四日付、昭和四七年一月二四日付各質問てん末書
一、同被告人作成の上申書
一、証人金泰錫の当公判廷における供述
一、渡辺幸彦作成の各上申書
一、金孝植の大蔵事務官に対する昭和四六年八月三〇日付質問てん末書
一、大蔵事務官作成の記録第8号犯則その他所得調書(貸借四三年分)
一、大蔵事務官作成の所得税納付状況調査書
一、大蔵事務官作成の預金残高および預金利息(税引後)調査書
一、横浜信用金庫大口支店長篠原正作成の証明書三通
一、株式会社東京相互銀行横浜駅前支店長乙幡寿作成の証明書
一、株式会社東海銀行荏原支店長小野良平作成の証明書
一、横浜信用金庫本店営業部長城下栄三郎作成の証明書三通
一、横浜信用金庫末吉支店長馬場明作成の証明書
一、横浜信用金庫末吉支店長代理小山健三作成の上申書
一、有限会社鄭建築研究所長鄭鉋泰作成の取引内容照会に対する回答と題する書面の謄本
一、富岡合資会社袖山白徳作成の領置No.1についてと題する書面
一、東急不動産株式会社営業部管理センター主事吉田茂作成の証明書
一、双葉商事株式会社常務取締役岸野雅行作成の上申書
一、株式会社ヤナセ横浜支店経理部経理課長河野秀彦作成の取引内容照会に対する回答書二通
一、京急日産自動車株式会社総務部経理係長原道夫作成の取引内容照会に対する回答書謄本
一、自動ライン株式会社作成の横浜会館と当社との取引についてと題する書面
一、押収してある許燦名義の昭和四三年分の所得税確定申告書一綴(前同号の二)、許英圭名義の昭和四三年分の所得税確定申告書一綴(同号の九)、契約書等一袋(同号の一三)、約束手形(民間建設工事標準請負契約約款一通を含む。)一袋(同号の一五)、総勘定元帳四綴のうち昭和四二年、同四三年度分(同号の一六)、日計表一〇綴(同号の一八)、決算関係書類等一袋(同号の一九)
訓示第二の二の事実につき
一、被告人許英圭の大蔵事務官に対する昭和四六年二月一日付、同年四月二一日付、同月二八日付、同年五月三一日付、同年九月八日付、同月一六日付、同年一〇月一〇日付、同年一一月一日付、同月一三日付、同年一二月一〇日付、同月一四日付各質問てん末書
一、同被告人作成の上申書
一、証人金泰錫、許福祥の当公判廷における各供述
一、金炳権、金孝植、許燦(同年五月二四日付、同年一二月一五日付)、小川ミヨ、長嶋三郎の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、渡辺幸彦作成の各上申書
一、大蔵事務官作成の記録第10号犯則その他所得調書(貸借44年分)
一、大蔵事務官作成の所得税納付状況調査書
一、大蔵事務官作成の預金残高および預金利息(税引後)調査書
一、株式会社東京相互銀行横浜駅前支店長乙幡寿作成の証明書
一、横浜信用金庫大口支店長篠原正作成の証明書三通
一、横浜信用金庫本店営業部長城下栄三郎作成の証明書三通
一、横浜信用金庫末吉支店長馬場明作成の証明書
一、フジタ工業株式会社横浜支店総務部長大西進作成の上申書
一、ヤマギワ電気株式会社横浜支店長久保田美治作成の各上申告書
一、株式会社横浜家具会館店長宮川譲作成の上申書
一、株式会社クラウン家具代表取締役社長山下善次郎作成の上申書
一、松栄商事有限会社松江仁寿作成の証と題する書面
一、株式会社正鳳開発設計事務所代表取締役斉藤正己作成の松本英治(横浜会館)との取引についてと題する書面
一、矢島弘一作成の松本英治関係との取引内容についてと題する書面
一、横浜トヨペツト株式会社横浜営業所総務課瀬戸君雄作成の松本光州こと許燦等の取引内容についてと題する書面
一、株式会社ヤナセ横浜支店経理部経理課長河野季彦作成の取引内容照会に対する回答書二通
一、京急日産自動車株式会社総務部経理係長原道夫作成の取引内容照会に対する回答書謄本
一、株式会社亀屋本店代表取締役管道康作成の松本英治氏からの借入金についてと題する書面
一、自動ライン株式会社作成の横浜会館と当社との取引についてと題する書面
一、河合電話株式会社代表取締役河合茂男作成の松本光州関係との取引についてと題する書面
一、押収してある許燦名義の昭和四四年分の所得税の確定申告書一綴(前同号の三)、許英圭名義の昭和四四年分の所得税の確定申告書一綴(同号の一〇)、土地売買契約書等一袋(同号の一一)、約束手形(民間建設工事標準請負契約約款を含む)一袋(同号の一五)、総勘定元帳四綴のうち昭和四三年、同四四年度分(同号の一六)
(法令の適用)
被告人許英圭の判示第一の所為は法人税法第一五九条第一項に、判示第二の各所為は所得税法第二三八条第一項にそれぞれ該当するからいずれも懲役と罰金を併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条に則り犯情の最も重い判示第二の(一)の所得税法違反罪の刑に法定の加重をした刑期、罰金刑については刑法第四八条第二項に従い各罪につき定められた罰金額を合算した金額の各範囲内で同被告人を懲役一〇月および罰金七〇〇万円に処し、同法第一八条により右罰金を完納することができないときは金一〇、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置し、同法第二五条第一項によりこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。なお、被告人許英圭の判示第一の所為は、同被告人が被告人株式会社横浜会館の代表者として、その業務に関してなしたものであるから法人税法第一六四条第一項に従い、同法第一五九条第一項に定められた罰金刑の範囲内で被告人株式会社横浜会館を罰金一二〇万円に処し、訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文、第一八二条を適用して、その全部を被告人らに連帯して負担させることとする。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 青山惟通)
貸借対照表
被告人株式会社横浜会館分
昭和44年12月31日現在
<省略>
<省略>
貸借対照表
被告人許英圭分
昭和43年12月31日現在
<省略>
<省略>
※ 給与所得686,625を含む。
貸借対照表
被告人許英圭分
昭和44年12月31日現在
<省略>
<省略>
※ 給与所得3,722,000を含む